内部監査報告書の書き方|経営に読まれる指摘事項と改善提案の型・テンプレート

内部監査の成果は、最終的に監査報告書という形で経営層や監査対象部門に届けられます。どれほど丁寧に往査や検証を行っても、報告書が読まれなかったり、指摘の意図が伝わらなかったりすれば、改善にはつながりません。「報告書が長すぎて社長が目を通してくれない」「指摘事項に対して現場から反発が出る」「改善提案が抽象的で、何をすればよいか分からないと言われる」といった悩みを抱える内部監査担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、経営に読まれ、現場の改善につながる内部監査報告書の書き方を、報告書の構成、指摘事項の型、表現の工夫、チェックリストの順に解説します。

内部監査報告書の役割と読み手

内部監査報告書には、主に次の3つの役割があります。

  • 経営層・取締役会・監査役等に、監査対象のリスクと内部統制の状況を伝える
  • 監査対象部門に、改善が必要な事項とその理由を伝え、是正の行動を促す
  • 監査の実施内容と結論を記録として残し、フォローアップや翌年度の計画に活用する

ここで重要なのは、読み手によって知りたいことが異なるという点です。経営層は「全体として問題はあるのか」「経営として判断すべきことは何か」を短時間で把握したいと考えます。一方、監査対象部門は「具体的に何が問題で、何をすればよいのか」を知りたいと考えます。報告書は、この両方の読み手を想定して構成する必要があります。

グローバル内部監査基準(GIAS)でも、内部監査の結果の伝達は、正確・客観的・明瞭・簡潔・建設的・完全・適時であることが求められています。これらの要素は、報告書の書き方を見直す際の指針になります。

経営に読まれる報告書の構成

報告書の構成は、結論を先に示し、詳細を後に置く形が基本です。経営層は冒頭の要約だけを読んでも全体像がつかめるように、監査対象部門は詳細部分で具体的な内容を確認できるようにします。

報告書の基本構成テンプレート

内部監査報告書の基本構成の例を示します。自社の様式に合わせてご活用ください。

  1. 表紙:監査テーマ、対象部門、監査期間、報告日、作成者、配布先
  2. エグゼクティブサマリー:監査の総合評価、重要な指摘事項の要約、経営として判断・対応が必要な事項
  3. 監査の概要:監査の目的、範囲、対象期間、実施した主な手続、監査の制約事項
  4. 総合評価:評価区分とその理由
  5. 指摘事項と改善提案:指摘事項ごとに重要度、内容、改善提案、監査対象部門の回答
  6. 良好事例:他部門の参考になる取り組み
  7. 添付資料:詳細なデータ、分析結果、用語の説明など

エグゼクティブサマリーの書き方

エグゼクティブサマリーは、報告書の中で最も重要な部分です。経営層がここだけを読んで判断できるよう、1ページ程度に収めることを目安にします。記載すべきは、総合評価の結論、重要度の高い指摘事項の要点、経営層に求める判断や支援の3点です。個々の指摘事項をすべて並べるのではなく、重要なものに絞って記載し、全体の件数は重要度別に示すと分かりやすくなります。

エグゼクティブサマリーの文例を示します。内容は説明のための架空の例です。

本監査では、購買部の発注から支払までのプロセスを対象に、内部統制の整備・運用状況を評価しました。総合評価は「要改善」です。主な理由は、一定金額以上の発注の一部で事前承認が行われておらず、システム上も承認前の発注を制限する仕組みがないことです(重要度:高)。このほか、重要度中の指摘事項が2件、低が3件あります。経営会議には、発注システムの改修に必要な予算と実施時期についてご判断をお願いします。

このように、「何を対象に」「どう評価したか」「その主な理由」「経営に求めること」の順で書くと、数行で要点が伝わります。

監査の概要と制約事項の書き方

監査の概要では、監査の範囲に含まれるものと含まれないものを明確にしておくことが大切です。範囲外の事項について問題がないと誤解されることを防ぐためです。例えば「本監査は本社購買部の取引を対象とし、子会社および海外拠点の購買取引は含んでいません」「サンプルによる検証であり、すべての取引について問題がないことを保証するものではありません」といった記載が考えられます。また、資料の提出が得られなかった、システムのログが保存期間を過ぎていたなど、監査の実施に制約があった場合は、その内容と結論への影響を明記します。

総合評価の示し方

総合評価は、「良好」「おおむね良好」「要改善」「重大な改善が必要」のように、あらかじめ定めた区分で示すと、監査間の比較や経年での変化が分かりやすくなります。区分の定義は内部監査規程や監査マニュアルで定めておき、評価の理由を簡潔に添えるようにしましょう。

指摘事項の型:基準・現状・原因・影響・改善提案

指摘事項は、決まった型に沿って書くことで、論理が明確になり、読み手の納得を得やすくなります。内部監査の実務でよく用いられるのが、次の5つの要素で構成する型です。

要素 内容 書き方のポイント
基準 あるべき姿(規程、法令、社内ルール、一般的な実務慣行) 根拠となる規程名や条項を具体的に示す
現状 監査で確認した事実 件数、期間、対象を明示し、事実と意見を分ける
原因 基準と現状の差が生じた理由 担当者個人ではなく、仕組みや手順の問題として分析する
影響 放置した場合に生じうるリスク 財務、業務、法令、評判などの観点で具体的に書く
改善提案 差を解消するための対応策 原因に対応した、実行可能な提案にする

記載例

型に沿った指摘事項の記載例を示します。内容は説明のための架空の例です。

  • 基準:購買管理規程では、一定金額以上の発注について、発注前に部門長の承認を得ることを定めている
  • 現状:監査対象期間の発注データを確認したところ、承認が必要な発注のうち一部について、承認日が発注日より後になっていた
  • 原因:発注システムに承認前の発注を制限する機能がなく、急ぎの案件では事後承認が慣行になっていた
  • 影響:承認を経ない発注が可能な状態であり、不要な購買や不正な発注を防止できないおそれがある
  • 改善提案:発注システムで承認前の発注を制限する設定を検討するとともに、緊急時の発注手順と事後承認の期限を規程で定める

このように、原因と改善提案が対応していると、監査対象部門は何をすべきかを具体的に理解できます。「規程を遵守すること」「周知徹底すること」といった改善提案は、原因の分析が不十分なときに出やすい表現なので注意が必要です。

指摘事項を基準・現状・原因・影響・改善提案の5要素で構成する図
指摘事項を基準・現状・原因・影響・改善提案の5要素で構成する図

指摘事項の重要度の付け方

すべての指摘事項を同じ重さで並べると、経営層はどれから対応すべきか判断できません。重要度をあらかじめ定めた基準で区分し、報告書に明示することが大切です。

重要度の区分の例は次のとおりです。

区分 目安 対応の期限の目安
高 重大な損失、法令違反、不正につながるおそれがあり、経営層の判断や早急な対応が必要 早急に対応策を決定し、短期間で是正
中 業務の有効性や効率性に一定の影響があり、計画的な改善が必要 数か月以内を目安に是正
低 影響は限定的だが、改善が望ましい 次回監査までに是正

重要度の判断は、影響の大きさと発生可能性を考慮して行います。判断に迷う場合は、内部監査部門の中でレビューを行い、判断の根拠を調書に記録しておきましょう。判断の経緯を残しておくことで、監査対象部門から重要度について質問を受けた場合にも、根拠をもって説明できます。

なお、個々の指摘事項の重要度が低くても、同じ原因による不備が複数の部門で見られる場合は、組織全体の課題として重要度を引き上げることも検討します。

読まれる報告書にするための表現の工夫

報告書の読みやすさは、構成だけでなく、文章の表現にも大きく左右されます。

事実と意見を分ける

「管理が杜撰である」「意識が低い」といった評価的な表現は、読み手の反発を招きやすく、改善の議論を妨げます。まず確認した事実を客観的に書き、そのうえで監査人としての評価や意見を分けて記載するようにします。

抽象的な表現を避ける

「一部に不備が見られた」「適切でない事例があった」だけでは、どの程度の問題なのかが伝わりません。確認した対象、件数、期間などを具体的に示すことで、問題の大きさを読み手が判断できるようにします。

NG表現と書き換え例

報告書でよく見られる表現と、その書き換え例をまとめました。

NG表現 問題点 書き換え例
管理が杜撰である 評価的で根拠が示されていない 在庫の実地棚卸の結果と帳簿残高の差異について、原因の調査記録が残されていなかった
一部に不備が見られた 範囲と程度が不明 確認した契約書のうち、複数件で締結日の記載がなかった
周知徹底すること 具体的な行動が分からない 承認手順を業務マニュアルに追記し、担当者向けの説明会を実施する
担当者の認識不足による 個人の問題に帰着させている 手順書に確認項目が定められておらず、担当者の判断に委ねられていた

良い点も伝える

報告書が指摘事項だけで構成されていると、監査対象部門は「粗探しをされた」と受け止めがちです。他部門の参考になる取り組みや、前回監査から改善された点を良好事例として記載することで、監査に対する前向きな受け止めを促すことができます。

文章の長さと用語に配慮する

一文が長くなると、主語と述語の関係が分かりにくくなり、誤読の原因になります。一文には一つの内容を書くことを意識し、箇条書きや表を適宜使って情報を整理しましょう。また、監査の専門用語や社内の略語は、経営層や他部門の読み手には通じないことがあります。初出で短く説明を添えるか、添付資料に用語の説明をまとめておくと親切です。

報告までのプロセス:事前協議と回答の取り付け

報告書の内容について、提出前に監査対象部門と協議する機会を設けることも重要です。往査の終了時に講評会を行い、指摘事項の事実関係を確認しておくと、報告書の段階での事実誤認や反発を防げます。

講評会では、発見事項ごとに「確認した事実」「根拠となる基準」「現時点での評価」を順に説明し、事実関係に誤りや確認漏れがないかを監査対象部門に尋ねます。監査対象部門から追加の資料や説明が示された場合は、その場で結論を出さず、持ち帰って検討したうえで報告書に反映するかを判断します。講評会の出席者、説明した内容、監査対象部門からの意見は記録に残しておき、報告書の段階で「聞いていない」という行き違いが起きないようにしておきましょう。

報告書のドラフトは監査対象部門に共有し、事実関係の確認と、改善提案に対する回答(対応策、責任者、完了予定日)を求めます。回答を報告書に併記することで、経営層は指摘事項と対応の見通しを一度に把握できます。回答をもとにしたフォローアップの進め方は「監査指摘事項のフォローアップ」をご参照ください。

報告は、監査終了から時間をおかずに行うことが望まれます。報告が遅れると、指摘事項の重要性が薄れ、改善のタイミングを逃すおそれがあります。報告の期限をあらかじめ監査マニュアルで定めておくとよいでしょう。

報告の場と資料の使い分け

報告書を作成しても、経営層が文書をじっくり読む時間を確保できるとは限りません。報告書そのものに加えて、報告の場に合わせた資料を用意することも、監査結果を届けるうえで有効です。

経営会議・取締役会への報告

経営会議や取締役会では、個別の監査報告書をそのまま配布するより、一定期間の監査結果をまとめた概要資料を用意するほうが伝わりやすい場合があります。例えば、四半期ごとに実施した監査の総合評価、重要度の高い指摘事項、是正の進捗状況を1〜2ページにまとめ、個別の報告書は参考資料として添付する形です。複数の監査を横並びで示すことで、組織全体としてどこにリスクが集中しているのかを経営層が把握しやすくなります。

監査役等への報告

監査役等への報告では、指摘事項の内容に加えて、経営トップに関わる事項や、監査の過程で把握したガバナンス上の懸念など、監査役等の職務に関係する情報を漏れなく共有することが大切です。定例会の場で報告書を説明し、質疑応答の内容を記録しておくとよいでしょう。

可視化による伝達

指摘事項の件数や重要度、是正の進捗状況をグラフや一覧で示すと、文章だけの報告よりも状況を短時間で把握できます。監査結果を継続的に可視化する方法については「BIツールで内部監査を可視化する」も参考にしてください。ただし、可視化はあくまで報告書を補うものであり、指摘事項の根拠や改善提案の内容は報告書で丁寧に説明することが前提です。

報告書の品質を保つレビュー体制

報告書の品質は、作成者の文章力だけに頼るのではなく、提出前のレビューの仕組みで支えることが大切です。レビューは、少なくとも次の2段階で行うと、事実の誤りと表現の問題の両方を防ぎやすくなります。

レビューの段階 主な担当 確認の観点
調書との照合 監査チームの主任、または他の監査人 報告書の記載が監査調書の証拠で裏付けられているか、件数や期間に誤りがないか
内容と表現の確認 内部監査部門長 総合評価と重要度の判断が妥当か、表現が客観的で読み手に伝わるか、経営に求める事項が明確か

調書との照合では、報告書に記載した数字や事実の一つひとつについて、どの調書に根拠があるかを確認します。報告書の数値が調書と一致していないと、監査対象部門から指摘を受けた際に報告書全体の信頼を損ないます。監査調書の作成方法については「監査調書の書き方」も参考にしてください。

一人で内部監査を担当している場合は、社内でレビューを受けることが難しいこともあります。その場合でも、ドラフトを作成してから時間をおいて読み直す、チェックリストで機械的に確認する、重要な報告書については外部の専門家に確認を依頼するといった方法で、品質を確保する工夫が考えられます。

よくある質問

Q. 指摘事項がない場合も報告書は必要ですか。

必要です。指摘事項がなかったことも、監査の重要な結論です。監査の範囲と実施した手続、総合評価を記載し、どのような根拠で問題がないと判断したかを示します。良好事例があれば、あわせて記載するとよいでしょう。

Q. 監査対象部門が指摘事項に同意しない場合はどうすればよいですか。

まず事実関係に誤りがないかを改めて確認します。事実に誤りがなく、評価や改善提案について意見が分かれる場合は、監査対象部門の意見を報告書に併記し、内部監査部門としての見解を示したうえで、経営層の判断を仰ぐ方法があります。意見の相違を報告書から削除して済ませることは、監査の客観性を損なうため避けるべきです。

Q. 報告書はどのくらいの分量が適切ですか。

監査の範囲や指摘事項の数によって異なるため一律には決められませんが、エグゼクティブサマリーを1ページ程度に収め、詳細は本文と添付資料に分けることが基本です。分量を減らすことよりも、読み手が必要な情報にすぐたどり着ける構成にすることを優先しましょう。

報告書の提出前チェックリスト

報告書を提出する前に確認したい事項をまとめました。

  • エグゼクティブサマリーだけで、総合評価と重要な指摘事項が把握できるか
  • 監査の目的・範囲・対象期間・制約事項が明記されているか
  • 指摘事項が「基準・現状・原因・影響・改善提案」の要素を備えているか
  • 原因の分析が、担当者個人ではなく仕組みや手順の観点で行われているか
  • 改善提案が原因に対応し、具体的で実行可能な内容になっているか
  • 重要度があらかじめ定めた基準で区分され、根拠が調書に残っているか
  • 評価的・抽象的な表現がなく、事実と意見が分けて書かれているか
  • 事実関係について、監査対象部門と確認が済んでいるか
  • 監査対象部門の回答(対応策、責任者、完了予定日)が記載されているか
  • 監査の範囲外の事項と、監査の実施上の制約が明記されているか
  • 報告書の数値や事実が、監査調書の証拠と一致しているか
  • 配布先と報告の期限が、規程に沿っているか

まとめ

経営に読まれる内部監査報告書のポイントは、結論を先に示す構成、型に沿った指摘事項、事実に基づく具体的な表現の3点です。エグゼクティブサマリーで全体像と経営判断が必要な事項を示し、指摘事項は「基準・現状・原因・影響・改善提案」の型で論理を明確にすることで、経営層にも監査対象部門にも伝わる報告書になります。監査の範囲と制約事項を明記して誤解を防ぎ、調書との照合と部門長による確認の2段階でレビューを行うことで、報告書の信頼性も高まります。重要度の区分や事前協議、回答の取り付けといった報告までのプロセスもあわせて整えることで、報告書が改善の出発点として機能します。本記事のテンプレートとチェックリストを活用し、自社の報告書の見直しに役立ててください。

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